
「まさか出て行けと言われるとは…」定期借家契約の落とし穴とテナント開業前の注意点
この記事の結論
賃貸借契約には、契約期間が満了しても更新される「普通借家契約」と、期間満了とともに契約が終了する「定期借家契約」の2種類があります。事業用テナントでは定期借家契約が採用されるケースも多く、契約更新がない、中途解約が原則できない、賃料が固定・自動改定される場合があるなど、普通借家契約にはない特徴があります。せっかく事業が軌道に乗っても、契約期間満了で退去を求められる可能性があるため、契約前に契約形態と契約書の内容を必ず確認することが、開業後のトラブルを防ぐ鍵になります。
1. 賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」がある
建物を借りて事業を営む際、テナントとして結ぶ賃貸借契約には、大きく分けて「普通借家契約」と「定期借家契約」の2つの種類があります。どちらも借地借家法にもとづく契約ですが、契約の更新の有無や、契約終了時の扱いが大きく異なります。
普通借家契約は、借地借家法が定める原則的な契約形態です。契約期間が満了しても、貸主に「正当事由」がない限り、貸主から一方的に契約の更新を拒絶することはできません。そのため、借主であるテナント側は、契約期間が終わっても事業を継続しやすいという安心感があります。
これに対して定期借家契約は、2000年の借地借家法改正で新たに設けられた契約形態です。契約期間が満了すると、更新されることなく契約は当然に終了します。貸主・借主双方が合意すれば、あらためて新しい定期借家契約(再契約)を結ぶことは可能ですが、法律上「再契約する義務」までは貸主に課されていません。
初めて開業される方にとって重要なのは、「その物件がどちらの契約形態なのか」は、多くの場合、貸主側の意向であらかじめ決まっているという点です。良い立地・好条件の物件が見つかっても、それが定期借家契約であれば、普通借家契約とは異なる注意点をあらかじめ理解したうえで契約に臨む必要があります。
近年、事業用テナントでは定期借家契約を採用する貸主が増える傾向にあります。背景には、貸主側にとって契約終了時期が明確になり、建て替えや大規模修繕、他用途への転用といった今後の計画を立てやすくなるという事情があります。借主にとっても、賃料が周辺相場より抑えられているケースがあるなど一定のメリットはありますが、その裏側にあるリスクを理解しないまま契約してしまうと、開業後に想定外の負担を抱えることになりかねません。
2. 普通借家契約と定期借家契約の違いを比較する
両者の違いは複数の項目にわたります。契約前に必ず確認しておきたい主な違いを、下表にまとめました。
| 比較項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | 期間満了後も原則として更新される(貸主に正当事由がなければ更新拒絶不可) | 更新はなく、期間満了により契約は終了する(再契約は当事者の合意による) |
| 契約締結の方式 | 口頭でも契約は成立する(書面がなくても有効) | 公正証書等の書面(一定の要件を満たせば電磁的記録も可)による契約が必須 |
| 事前の説明義務 | 特に定めなし | 契約前に「更新がなく、期間満了で終了する」旨を記載した書面を交付し、説明することが義務(怠ると特約は無効) |
| 契約期間 | 1年未満の期間を定めた場合、期間の定めのない契約とみなされる | 1年未満の契約期間も有効 |
| 中途解約 | 特約がない限り、借主からの中途解約には制限がある場合が多い | 原則として期間内の解約はできない(特約があれば解約可能) |
| 賃料の増減額請求 | 特約があっても、賃料増減額請求権を完全には排除できない場合が多い | 特約により賃料増減額請求権を排除できる(賃料が固定・自動改定される契約もある) |
| 契約終了の通知 | 更新拒絶には正当事由と一定期間前の通知が必要 | 期間が1年以上の場合、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに契約終了の通知が必要 |
※上表は借地借家法にもとづく一般的な傾向を示したものです。個別の契約内容によって扱いが異なる場合があるため、契約書の記載内容を必ず確認してください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。判断に迷う場合は弁護士など専門家にご確認ください。
3. 定期借家契約で開業する際に知っておきたい5つのリスク
定期借家契約は、貸主にとって「契約終了時期が明確になる」というメリットがある一方、借主であるテナント側には特有のリスクがあります。開業を検討する際は、以下の点を押さえておきましょう。
リスク1:契約期間満了で退去を求められる可能性がある
定期借家契約は更新がなく、契約期間が満了すれば契約は終了します。事業が軌道に乗り、常連客がつき始めたタイミングであっても、貸主が再契約に応じなければ退去せざるを得ません。再契約の可否は、あくまで貸主の意向次第という点は理解しておく必要があります。
リスク2:中途解約が原則できない
定期借家契約は、契約書に中途解約に関する特約がない限り、期間内に借主側から解約することが原則できません。開業してみて事業がうまくいかない場合でも、簡単には契約を終わらせられず、残りの契約期間分の賃料の支払いを求められるケースもあります。開業前に、中途解約条項の有無と条件を必ず確認しましょう。
リスク3:賃料が固定・自動改定される場合がある
定期借家契約では、特約によって賃料増減額請求権を排除できます。そのため、契約時に定めた賃料が契約期間中ずっと固定される契約や、あらかじめ定めたスケジュールに沿って段階的に増額していく契約も見られます。長期的な収支計画に直結する部分なので、賃料に関する特約の内容は入念にチェックしておきたいポイントです。
リスク4:内装・設備投資を回収しきれないおそれがある
開業にあたっては、内装工事や設備の導入に多額の初期投資をすることが少なくありません。しかし契約期間が満了して退去を求められると、投資を回収しきる前に閉店を強いられる可能性があります。契約期間と投資回収にかかる想定期間のバランス、原状回復義務の範囲、造作買取に関する特約の有無なども、あわせて確認しておく必要があります。
リスク5:再契約時に条件が変更されるおそれがある
定期借家契約が満了した後、貸主・借主の合意で再契約することは可能ですが、その際に賃料の増額や契約条件の変更を求められることがあります。再契約が保証されているわけではないため、長期的に事業を続けたい場合でも、見通しを立てにくい面があることは念頭に置いておきましょう。
4. 定期借家契約の締結から契約終了までの流れ
定期借家契約は、普通借家契約とは締結の手続きそのものが異なります。契約前の説明から契約終了までの大まかな流れを押さえておきましょう。
定期借家契約の締結から契約終了までの流れ
期間満了で終了する」旨の説明を受ける
契約を締結
などを確認しながら事業を継続
1年前〜6か月前に終了通知
貸主との合意があれば再契約も
特に注意したいのが、STEP1の事前説明です。定期借家契約は、貸主が契約前に「契約の更新がなく、期間満了により賃貸借は終了する」旨を記載した書面を交付し、口頭でも説明することが法律上義務付けられています。この手続きが行われていない場合、契約書に「更新なし」と書かれていても、法律上は普通借家契約とみなされる可能性があります。逆にいえば、テナント側もこの説明をきちんと受けたかどうかを確認しておくことが、後々のトラブル防止につながります。
また、STEP4の終了通知も見落とされがちなポイントです。契約期間が1年以上の定期借家契約では、貸主が期間満了の1年前から6か月前までの間に契約終了の通知をしなければ、貸主は借主に対して契約の終了を主張できません。この場合、通知をした日から6か月が経過するまでは契約が継続する扱いになります。借主側としても、契約期間の終盤には終了通知が届いているかどうかを意識しておくと安心です。
5. 契約前に確認しておきたいチェックリスト
定期借家契約でテナントを借りる際は、以下の項目を契約前にチェックしておくと安心です。
定期借家契約でテナントを借りる際に確認したい項目
- 契約書に「定期借家契約」である旨が明記され、更新がないことの説明書面を受け取っているか
- 契約期間と、契約終了通知が行われる時期
- 中途解約条項の有無と、解約時の条件(違約金や予告期間など)
- 賃料改定に関する特約の有無(増額スケジュール、賃料増減額請求権の排除の有無)
- 内装・設備の原状回復義務の範囲、造作買取に関する特約の有無
- 再契約の可能性について、貸主の意向を事前に確認できているか
特に賃料改定特約と中途解約条項は、開業後の資金計画に直結する部分です。口頭での説明だけでなく、契約書に明記されているかどうかを必ず確認しましょう。内容に不安がある場合は、契約前に不動産会社や専門家に相談することをおすすめします。
6. よくある質問(FAQ)
定期借家契約は途中で解約できませんか?
定期借家契約は必ず期間満了で退去しなければなりませんか?
普通借家契約から定期借家契約への切り替えはできますか?
定期借家契約は書面がなくても有効ですか?
定期借家契約の賃料は普通借家契約より安いのですか?
7. まとめ
普通借家契約と定期借家契約の最も大きな違いは、契約が更新されるかどうかです。普通借家契約は正当事由がない限り更新されるのに対し、定期借家契約は期間満了とともに契約が終了し、再契約するかどうかは貸主の意向次第になります。
特に事業用テナントとして定期借家契約を結ぶ場合は、契約期間満了による退去、中途解約の制限、賃料改定特約による負担増など、普通借家契約にはないリスクをあらかじめ理解しておくことが重要です。契約書の内容を十分に確認しないまま契約すると、開業後に想定外の負担を抱えることにもなりかねません。
契約形態や契約書の内容に少しでも不安がある場合は、開業を検討し始めた段階で不動産会社に相談するのが安心です。大阪でテナント物件をお探しの方は、契約内容の確認から契約手続きまで、リノベスト不動産へお気軽にご相談ください。
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